女性疾患について
女性疾患といっても、その症状の現れ方は多岐にわたっています。
決して男性にはそのような症状が現れないという事ではありませんが、女性には月経や産前・産後・閉経など人生の中で、内分泌(ホルモン)の変化が身体のあらゆる機能に影響をおよぼすという特徴があります。(男性ホルモンは女性ホルモンのように急激に変化することはなく、加齢によるホルモンの低下も女性ほどに極端ではないため、症状にしても女性ほど顕著に現れないといわれています)
例えば、月経不順や月経前・月経中の疼痛。それに伴う気分的な浮き沈み。
更年期障害・不妊症・自律神経失調症や甲状腺機能亢進症又は低下症については、男性より女性の疾病率が多いという報告もあります。
内分泌(ホルモン)というのは脳の中枢からの指令で全身のあらゆる器官や臓器を環境の変化に応じて調節をしているものです。
また、もう一つ神経系と呼ばれる、脳と身体を神経伝達によって多くのネットワークで連絡し合い体内環境を調節しているものもあります。この内分泌系と神経系によって、私たちの身体は外部・内部の環境の変化に対し適切な状態を維持できるようになっています。
そのため内分泌系と神経系は、身体の二大調節とも呼ばれます。
神経系は脳→身体間の連絡を活動電位という神経の伝達物質で神経の枝から枝へ伝えており連絡が早く伝わり、その身体への効果は短時間なものに対し、内分泌系は脳→身体間の連絡を化学的信号で血液中や体液を通して伝えており連絡がゆっくり伝わり、その身体への効果は血中や体液からその化学物質が取り除かれるまで長く続くという特徴もあります。
また内分泌系と神経系の自律神経はお互いに影響しあう関係にあります。
これは内分泌系をコントロールしている脳の中枢と自律神経をコントロールしている脳の中枢が[視床下部]という同一の器官がその役割を担っているからです。
自律神経の働きの乱れはホルモンバランスの乱れの原因にもなり、逆にホルモンバランスが乱れることによって自律神経もバランスを崩します。ですから、上記に記した女性特有の月経や妊娠・更年期などによって内分泌(ホルモン)のバランスが乱れると、相互関係にある自律神経に影響を与えます。
そのために月経や妊娠・更年期などで身体的・精神的に現れる症状が(頭痛・めまい・のぼせ・耳鳴り・動悸・慢性的な肩こりや腰痛・胃腸障害・倦怠感・イライラ感…など)全身性のもので、これは自律神経のバランスを崩した際と同じような症状が現れるのです。
ではまず、このホルモンがどこから発信して身体の各器官にどのような作用を及ぼしているのか?というところからみていきましょう。
内分泌は機能異常が起こったとき、症状はホルモン分泌を促している臓器ではなく、ホルモンが実際作用を及ぼしている臓器に現れます。
つまり、原因となる臓器から離れた場所に症状が現れるため、原因を推定しにくいのです。
私たちは普段、お腹の調子が悪ければ、消化器内科へ、動悸や息切れが酷ければ、循環器内科をまず先に受診すると思います。
しかし、消化器・循環器には異常がないということで、原因が限定できず、「精神的なものかもしれませんね」と、心療内科などに回されてしまうことが多いようです。
例えば、甲状腺機能低下症の患者さんが何年も心療内科に通院し続けてるなどは実際よくあります。
不定愁訴と呼ばれる症状や、原因が特定できない症状がすべて精神的なものでは、決してないはずです。
日本では、内分泌の専門医が足りていない現状もありますが、私たち自身も、内分泌の病気が見逃されやすい病気であることを知る必要がありますし、女性の生理の基本となる女性内分泌を理解していくことで、女性疾患を把握していく手立てにもなるはずです。